
世界中で愛され続ける果物。味、見た目、栄養が三ツ星
昔話や聖書に登場するなど、古くから世界中で親しまれる果物。栄養価も高く、食べやすいため、離乳食から病院食まで幅広く利用される。貯蔵技術の向上により周年出回る。旬は、品種によるが8月~翌1月頃で、主流品種の多くは9月~11月。
近年は、生産省力化と食味向上につなげるため、有袋(ゆうたい)栽培だけでなく無袋(むたい)栽培の普及がすすんでいる。無袋栽培のりんごは「葉とらずりんご」「サン○○」などのネーミングで商品化されている。なお、無袋栽培の代名詞である「サンふじ」は、JA全農長野の登録商標。また、「葉とらずりんご」は、通常果実全体に日光が当たるように行われる「葉つみ」を行わずに栽培したもの。色むらなどで見劣りするが、葉がつくる養分が果実に蓄えられ、味がよいとされている。
POPはコレ!
- 手作りジュースのベースに。クセのある素材にも万能。
- シャキッと歯ごたえ。塩水かレモンで色止めを!
- 甘みと酸味の好バランス。老若男女に好まれる果物。
市場シェアと出回り時期
鮮度の見分け方
- 尻が開いているもの
- 全体に色がまわっているもの
- 花落ち部の中心が空洞になっているもの
- 見た目より重さのあるもの
- ツルが太くてしっかりしているもの
- よい香りがするもの
栄養&機能性
カリウム、カルシウム、ペクチン
水溶性の食物繊維ペクチンを比較的多く含む。ペクチンには、血液中のコレステロールの上昇を抑える働きがあり、また胃に負担をかけずに整腸作用を持つといわれている。ペクチンはジュースにしても損なわれないうえ、りんごの味はアクの味や苦みをやわらげるため、手づくりジュースのベースとして最適。
ONE POINTアドバイス
- りんごの蜜は、葉で作られる「ソルビトール」という糖アルコールで、透き通ったように見える。このソルビトール自体はそれほど甘くないが、蜜が入ったものは成熟して全体の糖度も増しているため、蜜入りは日本においておいしいりんごの指標とされている。
売場づくりのポイント
- 大きさにより、販売単位を決める。目安は、32玉および36玉は1個売り、40玉は4個、46玉は6個。店舗の立地、客層により柔軟に対応することが必要。
- 蜜入り品種は半分に切って見本を作る。
- 蜜入りを不良品と思う消費者もいるので、その理由を説明するPOPをつけるとよい。
- パックしたものを積み重ねる時は、下の商品が傷つくことがあるので重ねすぎに注意する。
Q&A
Q1 | 皮のまま食べたら渋かったが農薬では? |
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A. 農薬ではなく、外部要因の影響による生理的障害によるもの。たとえば紅玉などは樹上で過熟するとゴム病になり、渋くなる。またCA貯蔵によって低温障害を起こし、味覚に異常をきたすなどがある。 | |
Q2 | 果芯部にある「蜜」は、欧米では敬遠されると聞いたがなぜ? |
A. 果芯部の蜜は、ソルビトールが多く含まれており糖ではない。しかも蜜は、冷蔵すると褐変しやすく日持ちも悪い。そのため欧米では「ウォーター・コア」(水入りりんご)と呼ばれ、敬遠されることが多い。一方日本では完熟の指標となっている。 | |
Q3 | 果肉が薄い赤色、またはピンク色をしているが食べでも大丈夫? |
A. 食べても問題はない。この現象は、果皮の赤色色素であるアントシアニンが、内部のクエン酸、リンゴ酸などの酸に溶解浸透して、色素が移行したため。果皮が赤く、酸味の強い紅玉などに見られる。 | |
Q4 | 内部が青みを帯びているが病気では? |
A. 病気ではない。栽培中に充分な炭水化物が果肉に蓄積されていない場合や、日当たりの悪い場所で栽培されたりんごに発生する現象。 | |
Q5 | 皮がベタベタしているが、油かワックスを塗っているの? |
A. 通常、国産のりんごには、ワックスや油などは塗られていない。これは「油上がり」といわる現象で、りんごの表皮から染み出してくる、オレイン酸やリノール酸などの植物油。収穫してから時間がたつと出てくるもので、りんご自身が乾燥から実を守るためといわれている。 | |
Q6 | 皮をむいたら直径3~4mmほど褐色に変色していたが腐っているの? |
A. 通称「ブク」といわれる貯蔵障害。取り除けば食べることができるが、商品価値はない。 | |
Q7 | 果皮に白い粉がふいているが、この粉は食べても大丈夫? |
A. 一般的に天然の果実が持っている果粉のソルビトールが白い粉となり、果皮に付着している場合が多い。他に、石灰ボルドー液の散布が残存する事もあるので、よく洗えば食べることができる。 |
食べ方のアドバイス
- 一般的に花落ち(尻)の部分と種の周りが甘いので、縦切りにすると、甘さを均一に食べることができる。
- 皮ごと食べる場合は、縦切りではなく、横に1㎝くらいの厚さの輪切りにしたり、みじん切りにすると、カスの残りが気にならない。
- 切り口は酸素の作用で褐変しやすいが、レモン汁や塩水につけておくと防げる。
- 切った後変色したリンゴは、100%のオレンジジュースにつけておくと、元の色に戻る。
【品種紹介(早生)】

『中が真っ赤な加工用リンゴ』
【御所川原】青森県御所川原市特産。150g前後と小さく、淡紅色で蝋細工のような光沢をもつ。熟してくると果皮に近い部分と果芯の周辺部がきれいな赤になる。酸味が強く、加工に向く。9月中旬
【品種紹介(中生)】

『手作りスイーツの定番!酸味を活かして!』
【紅玉】昭和30年代の主要品種。ジュースや焼きりんごなど、調理用、加工用に適し現在は希少価値が出てきている。また、生食用としても根強い支持がある。9月中旬~10月末

『大きさ世界一!贈り物にどうぞ』
【世界一】デリシャス×ゴールデンデリシャス。果重は500g前後と大きく、1kgにも。果汁が豊富で、味はやや淡泊。10月中旬~。冷蔵では大玉で年内、中玉で2月~3月頃まで

『食味やわらか。糖度の高いふじ』
【弘前ふじ】ふじの枝変わり。ふじよりも果肉がやわらかく糖度が高い。この弘前ふじのうち、糖度13度以上のものを厳選したものが「ゆめひかり」で、JAつがる弘前の登録商標。10月初旬

『食べきりサイズで女性へのプレゼントに』
【アルプス乙女】25~50gのミニサイズのりんご。ふじと紅玉の混植園で発見された偶発実生。飛行機の機内食用や縁日のりんご飴に使われる。渋みがあるが濃厚な味。10月中旬~下旬

『美しい紅色。濃厚なあじわい』
【こうたろう】ふじ×はつあき。きたろうと兄弟だが、暖地でもきれいに紅く色づくため、こうたろう(紅太郎)と名づけられた。果肉は硬めで甘みが強い。日持ちはあまりしない。10月下旬
【品種紹介(晩生)】

『美しい白金色!贈り物に人気』
【金星】国光×ゴールデンデリシャス。淡黄色で、本来はサビ状の果点があるが、有袋栽培では鮮やかな金色のような黄色になる。芳香があり、ジューシー。11月中旬から出回り、貯蔵性が高く5月下旬まで貯蔵できる

『気品ある外観。キング・オブ・アップル』
【陸奥】ゴールデンデリシャス×印度。大玉でボリューム感があり、日持ちもするため贈答用の需要も。有袋では黄緑色の地肌に淡紅色、無袋では青黄色に。食味は淡泊。10月中旬~。貯蔵性があり5月まで出回る

『希少ブランド。白い「ふじ」』
【マロンなアップル】全く陽を当てずに有袋栽培したふじ。赤くならず、生の栗の実のような、白い果皮になる。長野県のJA須高のブランドで、サンふじとペアでの「紅白販売」もある。12月頃
【りんごの収穫時期一覧】
出典
改訂9版 野菜と果物の品目ガイド
発行・発売 | 株式会社 農経新聞社 |
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写真撮影 | 株式会社 スタジオアトム |
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