
食べごろ販売が重要。産地の管理状況をチェック
日本なしと異なり、とろけるような果肉と芳香が特徴。りんごなどの果樹と同じく明治初期に欧米から導入された。しかし栽培や追熟の知識が乏しく、普及は一部の県にとどまり、その多くは加工用にされていたという。その後、1970年代に加工需要が低迷したことから生食への取り組みが本格化。現在の主流でもあるラ・フランスの導入により、秋の味覚として定着し、生産、消費とも一定水準を維持している。食べ頃の見極めが難しいとされ、産地で一定期間低温に当ててから追熟を行い、出荷されることが多い。近年は香気成分で色が変わり食べごろが判定できる「ライプセンス」と呼ばれるラベルも開発されている。生食用の品種は晩秋から冬にかけて食べごろになるものが多く、10月半ば頃から出回るラ・フランスが主流。全体としてみると、8月末から出回るバートレット、12月から出回るル・レクチェなど、品種が変わりながら8月~翌4月頃まで出回る。
POPはコレ!
- 豊かな香りが食べごろ。室温にしばらくおいて!
- 一度食べたらファンになる、なめらかな食感
- 硬めのときはサラダやピザの具に
市場シェアと出回り時期
鮮度の見分け方
- 果皮に傷のないもの
- 持った時に重さを感じるもの
- 果皮がしっとりと手になじむもの(食べごろの時期)
- 香りのよいもの
最適な保存条件
収穫後、温度0℃、湿度85~90%で約3か月の貯蔵が可能。出荷時期に合わせて20℃に温度を上げ追熟する。家庭での保存は、食べる分だけを室温に置いて追熟を進める。しばらく保存しておきたい場合は、紙袋や新聞紙に包み冷蔵庫の野菜室に入れて追熟を抑えるようにするとよい。その後も追熟は常温で行う。
ONE POINTアドバイス
- 切ってみて果肉が硬かった場合は、サラダなどに利用するとよい。ベビーリーフなどと合わせ、オリーブオイルとレモン汁、こしょうでシンプルに味付けするのがおすすめ。ワイン煮にしてもおいしい。
- 硬いときに長期保存をしたい場合は、シロップ煮やジャムにしてもよい。シロップ煮は密封容器に詰めて冷蔵庫に入れると長期保存ができる。
- 生クリームとの相性もよく、イチゴの代わりにショートケーキの材料にもあう。
- ブルーチーズとワインのおつまみにしてもよい。
- デザートだけではなく、ハムやチーズなどの塩味の効いたものにも合うため、ピザのトッピングにして焼いてもおいしい。
売場づくりのポイント
- 西洋なしは高級イメージがあるので、1 ~ 2 個パックで販売するとよい。
- 食べごろのものは、果皮や果肉が傷みやすいのでフルーツキャップをつけて販売する。
- できれば適熟の状態で販売することがのぞましく、それが店舗の評価にもつながる。未熟果は肉質が硬く、食べてもまずい。こうしたものを販売すると店の信用を損なう恐れがあるので注意。
- 傷があると追熟中に腐ってしまうので、保管する際の取り扱いには細心の注意をはらうこと。
- エチレン処理による早期出荷、冷蔵による遅出し出荷など出荷形態が様々で、その管理によって追熟日数も変わるため、産地の情報をしっかりと把握しておくことが重要。
- 多くの場合、産地出庫後1 週間ほど追熟し、売り場に到着する頃は食べごろの5 日前くらいになっていることが多い。すぐに食べるのではないことを、確実に消費者に伝えることが重要。
- 食べごろの目安を「香りが出て軸の近くがしわしわになったら食べごろ」などとPOP で説明し、硬い場合の食べ方も提案するとよい。
- 追熟が必要な場合は、家庭での追熟の方法とともに、追熟中の香りもよいので部屋に置くだけで楽しめることなど、プラスアルファの情報も伝えるとよい。
Q&A
Q1 | 追熟が終わり外皮に異常はなかったが、半分に切ったら果肉の内部に褐変が見られた。食べても大丈夫? |
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A. 食味が悪いので、食べるのには適さない。産地での収穫が遅れた場合や、肥料過多、カルシウム欠乏などから起こる現象。外部からの見極めが難しいため、産地の情報を把握しておくことが重要である。 |
食べ方のアドバイス
- 枝つきに近い部分よりも花落ちの部分のほうが甘く濃厚な味わいのため、縦切りにすると平均的に切り分けることができる。
- カットした後は褐変しやすいので、食べる直前にむくとよい。
コラム
西洋なしでランタンづくり
廃棄される西洋なしを使ったハロウィンのランタン(西洋ランプ)作りが、食育やハロウィンイベントに活用されている。これは新潟大学の「ル・レクチェ」を研究する園芸学研究室の学生たちが、2008年ごろからはじめた取り組み。
ル・レクチェはお歳暮などの贈答用に人気の西洋なしで、10月末のハロウィンの時期に収穫され、追熟後11月ごろから販売される。しかし売り物になるのはごく一部で、収穫前に落下したり、傷ができたものは追熟過程で腐敗してしまうため、全て廃棄されるという。この廃棄なしを「捨てるだけではもったいない」と、同研究室の学生がランタンに加工して学内に飾ったのがはじまり。果実は適度な硬さがあり、子供でもスプーンなどでくり抜くことができ、西洋なしの生育を知るきっかけにもなることから、首都圏での食育などにも活用されている。