なす

属性:ナス科ナス属
なす

個性あふれる地方品種。郷土料理の楽しみもあり!

日本では奈良時代から栽培されていたといわれ、現在も地方品種が各地に多く残っている。品種は形や大きさによって大別でき、全国的に主流となっているのは、用途性が広く栽培しやすい長卵形である。地方品種には、関東の卵形、東海・関西の長卵形、九州の大長なす、北陸や京都の丸なすなどがある。注目に値するのは、その地方品種のほとんどが各地域の郷土料理に深く関わっていること。用途によって漬物用、田楽用というように品種が使い分けなされている。近年は生食できる水なすや、ヨーロッパ産のカラフルな品種も出回っており、イタリアンやフレンチレストランのシェフから注目が集まっている。出回り時期は、主流の長卵形が産地リレーにより周年。地方品種は本来の旬に近く、夏~初秋であることが多い。

POPはコレ!

  • 油多めの強火でサッ!色よく仕上げるコツ!
  • 紫色はポリフェノール。皮も食べなきゃソン!
  • 煮ても焼いても!洋風にも和風にも!

市場シェアと出回り時期

なすの市場シェアと出回り時期

鮮度の見分け方

  • 皮に光沢とハリがあるもの
  • 表皮に色むらがなく、ガクの下の色が白いもの
  • ヘタの切り口が新しいもの
  • とげのある品種の場合は、とげがとがっているもの

最適な保存条件

最適保存条件は温度8~12℃、湿度90~95%だが、それでも貯蔵期間は1週間ほど。元来、高温下で生育する植物なので5℃以下では低温障害を起こす。また、表面の光沢とハリが商品の顔。表皮の乾燥を防ぐため、通風は避ける。家庭では、低温に弱いため新聞紙に包んで冷えすぎないようにし、冷蔵庫の野菜室へ。

栄養&機能性

カリウム、ナスニン、ビタミンK

実のほとんどが水分であるが、なすの紫色の色素はポリフェノールの一種で、その機能が注目されている。この色素はナスニン、クロロゲン酸で、抗酸化作用があり、がん予防、高血圧の予防、またコレステロール値を下げる働きがあるといわれている。さらに、血管の柔軟性を保つ作用や出血を防止するなどの効果でも注目されているルチン、ケルセチンが含まれている。わずかではあるが、食物繊維、ビタミン、ミネラルなども含まれている。

ONE POINTアドバイス

  • 丸ごと使う場合や、大きく切ったものを調理する場合は、皮に3~5mm間隔で浅く切り込みを入れておくと、味がしみやすい。切り込みを入れた後に水にさらす場合は、切れ目にしみた水分もしっかりと拭うことがおいしくするポイントとなる。
  • 焼きなすは、尻の部分にわり箸を差し込み、穴をあけた後、皮が真っ黒になるまで強火で焼くと、香ばしく仕上がる。
  • 油を吸いやすいため、ソテーにする時は、油を一度に入れないこと。キッチンペーパーになどを使い、少しずつフライパンに塗るようにして加えると、油分を抑えることができる。

売場づくりのポイント

  • 皮を手でさわるとツヤが落ちるので、なるべくへ夕を持って取り扱う。
  • ヘタの切り口を切り戻して、鮮度を強調する。
  • 通常は3~4個パックが適当だが、少人数家族が多い立地の店では2個パックも作っておくとよい。価格が高い時は、バラでも売る。
  • ふくらみのよい側を上に、ヘタの向きを揃える。
  • フィルムを巻く場合、腹のツヤがセールスポイントなので、できるだけピッタリと巻く。

Q&A

Q1 アルミ鍋でゆでたところ、なすが緑色になり、汁が黒くなったのはなぜ?
A. 果皮の成分のアントシアンが溶出し、鍋のアルミニウムと結合したため、汁が黒くなった。また、アルカリ性で加熱されたため、緑色になった。
Q2 塩もみを食べたら喉がヒリヒリしたが、なぜ?
A. 干ばつなどの環境下で栽培すると、アルカロイド系物質がなすに多く生成される。この物質の強い苦みと考えられる。
Q3 10℃以下の冷蔵庫で2~3日間保存したら、皮がやわらかくなり褐色になったがどうして?
低温保存で栄養価の減少が抑えられる通常の野菜とは違い、なすは温度が10℃以下では呼吸作用がほとんど止まり窒息状態になるため、皮がやわらかくなったり褐色になる。保存は10℃以下にならないようにしたい。
Q4 実の途中から小さな塊が出ているような変形のものは食べても大丈夫?
低温や過湿、肥料過多などが原因。花芽に栄養分が過剰に供給され起こる現象で問題ない。
Q5 水洗いしたら水が異常に着色したが大丈夫?
紫色であれば、なすの果皮に含まれる水に溶けやすい色素(ナスニン)と思われる。自然現象であるため問題はない。

下ごしらえのポイント

  • ガクの下の部分は、なすが一番新しく成長したところ。やわらかく甘みがあるので、身をなるべく残すようにして、ヘタだけを切るとよい。
  • アクが強いので、切ったらすぐに水にさらし5分ほどつけておくとよい。水から浮いて空気に触れてしまう場合は、落し蓋をすること。
  • 中華では切った後に油通し(高温の油にくぐらせること)してアクを抜く。この方法はカレーの具として使う場合にも有効。油通しをすると、皮の紫色も鮮やかに仕上がる。

★オススメ料理

焼き物/煮物/揚げ物/炒め物

【品種紹介】

大長なす

【大長なす】長さが30㎝になる細長いなす。九州に多くみられる。身がやわらかく、加熱すると食感がなめらかになる。焼きなすや炒め物、煮物などに向く

米なす

【米なす】大型で緑色のヘタが特徴。アメリカのなすを品種改良したもので、加熱調理に向く。田楽や、焼きなすにすると、トロッとした味わいになる

青なす

【青なす】緑色のなす。加熱すると実がやわらかくなるため、ソテーや田楽などに。加熱後は褐変するので、なるべく高温で処理するとよい

赤なす(ひごむらさき)

【赤なす(ひごむらさき)】赤紫色の皮が特徴。ずんぐりとした姿で25㎝以上になる。種が少なくやわらかい。またアクが少ないため焼きなすに利用されることが多い

白なす

【白なす】イタリアの品種。小ぶりで皮が白い。加熱するとねっとりするが、皮は変色する。日本では緑色のなすを白なすと呼んでいる地域もある

水なす

【水なす】絞ると水が滴るほど多汁。漬物のほか、鮮度の良いものは刺身にも。大阪の泉州水なすが有名で、主に漬物として贈答などに出回っている

萩たまげなす

【萩たまげなす】山口県の田屋なすの500g以上のものを指す。皮が薄く、実がやわらかい。焼きなすや田楽など、加熱向き。出回りは5月下旬~7月中旬

絹かわなす

【絹かわなす】絹のようなやわらかい皮が特徴といわれる。身もやわらかいため、浅漬けに向く。愛媛県西条市で作られてきた地方品種で、出回りは6月~10月

小なす

【小なす】種が少なく皮がやわらかいため、皮ごと漬物にされることが多い。地方品種も多く、卵型、丸型など形もさまざま、漬け方も地方により異なる

寺島なす

【寺島なす】黒紫色で小ぶりの卵型。皮が厚めで、主に漬物に利用されていた江戸東京野菜のひとつ。丸ごとの天ぷらにしても。出回りは6月~11月上旬

ゼブラなす

【ゼブラなす】イタリアの品種。白と紫から赤紫色の縞模様が入る。身が硬いが、加熱するとトロッとするので、ソテーや煮込み料理にするとよい

京しずく(リスターダ・デ・ガンディア)

【京しずく(リスターダ・デ・ガンディア)】イタリアの品種。赤紫色に白い縞模様が入る大型品種。京都府立農芸高等学校のオリジナルブランド。加熱調理向きで、ソテーや煮込み料理にも。7月下旬~9月末

出典

改訂9版 野菜と果物の品目ガイド

発行・発売   株式会社 農経新聞社
写真撮影株式会社 スタジオアトム
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